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107回定期演奏会の聴きどころ
音楽監督 山下一史

Ⓒ ai ueda

  緊急事態宣言が解除されたとは言え、感染拡大の脅威が未だ去らぬ中、各地のオーケストラの活動も徐々に再開されております。これまでに経験したことがない状況に対応するため様々な方策がとられています。
 このような状況の中、皆さんのご理解とご協力を賜りながら、ご一緒に「コロナ後」の演奏会の形態を模索していきたいと思っております。

 5月の定期演奏会が8月1日に延期されることが決まった時には、正直言って開催は難しいのではないかと考えておりました。
今回は弦楽器の編成を一回り小さくせざるを得ませんでしたが、当初予定していた通りのプログラムで開催できることは望外の喜びです。

 今回の定期演奏会の「聴きどころ」をご案内したいと思います。
 本年度は私が千葉交響楽団の音楽監督に就任して5年目の節目となる大切な一年です。
5年間の我々の共同作業の「成果」といえるようなものを皆様にお聴かせ出来ればと思っております。
 就任以来どちらかというとドイツ、オーストリアものを取り上げることが多かったのですが、今回は傾向を変えて新しい千葉響サウンドをお楽しみいただきたいと思います。
 コンサートの幕開けには、フランスの作曲家ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」をお聴きいただきます。この曲はフルートのソロで始まり、全曲に亘って大活躍するのですが、ソロを担当する吉岡次郎が、彼の自由な音楽性で、この曲が持つ神秘性や即興性をどの様に表現してくれるか今から楽しみです。
 ソリストには我が国のみならず、世界のサクソフォン奏者の中でも第一人者として認められており、また私の音楽の盟友でもある須川展也氏をお招きして2曲お聴きいただきます。彼とは20代の頃から共演を重ねており、同い年という事もあって個人的に彼から大きな刺激を受けて来ました。音楽監督就任時からの彼をソリストとして招くという夢がやっと叶いました。
 1曲目のドビュッシーの「アルト・サクソフォンと管弦楽のためのラプソディ」は、比較的新しい楽器であるサクソフォンの黎明期の傑作です。
 2曲目は、須川氏の為にファジル・サイが書き下ろした曲をお聴きいただきます。
須川氏は若いころから、決して広いとは言えないサクソフォンのレパートリーを広げるため、自ら多くの作曲家に委嘱して新しい作品を初演することを繰り返しています。そのようにして発表された委嘱作品は30曲以上にもなります。
 この2曲については須川氏ご本人の稿をご覧ください。

 コンサートのメインディッシュには、ロシアの作曲家ムソルグスキーが書いたピアノ曲を、フランスの作曲家ラヴェルが編曲した「展覧会の絵」を選びました。
幾つかの管弦楽編曲版がありますが、圧倒的にラヴェル編曲版の演奏頻度が高いです。
全曲に亘って姿を変えて出てくるプロムナードの旋律が印象的ですが、冒頭はトランペットのソロで、犬飼伸紀の腕と度胸の見せどころです。
この曲は趣の違う「絵画」をまさに「音」で描いていくわけで、豊かな音色感が求められます。ソロやアンサンブルで今や進捗著しい千葉響の管楽器奏者たちの魅力を存分にお楽しみください。また新入団員であるオーボエの浅原由香の初登場にも乞うご期待です。
それからここ数年ぐんと厚みを増した弦楽セクションにもご注目を。
そして最後に、「古城」のサクソフォンソロを担当するのは、なんと!須川展也さんです。
こんな贅沢、他ではなかなか聴けませんよ!

 2月末から演奏する機会を失っていた我々にとって、本当に格別な今回のコンサート。
この原稿を書きながら、大きな期待と少しばかりの不安とが入り混じった不思議な気持ちになっています。
 とは言え、皆さんの前に再び立ってまた演奏できることに感謝しつつ、渾身の演奏をお届けしたいと決意を新たにしています。